この間こんな記事を書きました。
『アンネの日記を読む前にこれを読んだ方が圧倒的に背景がわかっていいよ』という内容です。
ポチャナンダ
最初にアンネの日記を読み始めたときはなかなか話に入っていけなかったのですが、「思い出のアンネフランク」を読んだ後は夢中で読めました。
ポチャナンダ
一般論は知りませんが、僕が夢中で読んだ感想としては
- 隠れ家生活を始めるまでは面白い
- 隠れ家生活を始めてからはアンネのストレスの吐け口になっている
- 愚痴が続く期間が長くて前半飽きる
- 13才・14才とは思えぬ学習意欲とその内容のレベルの高さにびっくりする
- そもそも文章力のレベルがおかしいくらい高い
- 少しずつ露わになっていく隠れ家の人たちの本性が面白い
- 後半に入ってアンネが達観してくる
- 精神年齢が急激に上がり、隠れ家生活での人間関係の分析がすごくなる
- ペーターに恋心を抱くことでアンネの心の中が大きく変わる
- 愚痴だけでなく、自分の周りを取り巻く政治的・経済的状況についても書くようになる
- 自分の内面を鋭く見つめるようになる
- 15才とは思えぬ自己分析の能力の高さにびっくりする
ポチャナンダ
アンネの日記は1人の中学生の女の子が戦争中の不自由な隠れ家生活を通じて成長していく物語として素晴らしいですが、情報としていろいろ欠けているんですよね。
- 隠れ家の暮らしはどのような人たちによって支えられていたのか?
- アンネの家の周りでは戦争はどのような状況だったのか?
- 他のユダヤ人はどのように難を逃れようとしていたのか?
- ユダヤ人迫害についてオランダ人たちはどう思っていたのか?
- アンネの友達だったユダヤ人たちはどのくらい生き残ったのか?
- 連行されたユダヤ人たちはどうなったのか?
- アンネたちは連行されたあとどうなったのか?
アンネの日記が公開された当初はそういった情報がなかったわけです。
ところがアンネの日記が世界中で爆発的な反響を呼んだことで付随する情報がどんどん出てきます。
その結果壮大な謎解きミステリーのようなものになり、ますます人々の関心を惹くようになった。
こういう流れなわけです。
ポチャナンダ
僕もこの壮大なミステリーにどっぷり引き込まれ、全4冊を読み、ようやくアンネの人物像やその周りの人たちの人物像がはっきりし、「もうここまででいいかな」と昨日思えました。
イカさん
ポチャナンダ
明るく元気で好奇心いっぱいだった13才のアンネが2年間の隠れ家生活でものすごく大人になっていくんです。
その心の中を日記を通して見せてくれるんですが、15才とは思えないほど「いい女」なんですよ。
ちょっとした恋のような感情が芽生えます。
そして「思い出のアンネフランク」を書いたミープ・ヒースがこれまたいい女なんですね。
自分の危険を顧みず信念を持ってそれこそ身を粉にして8人の人たちに尽くす姿が現代を生きる僕らには信じられないほどなんです。
「どうしてそこまでやれるんだ!?」と驚いてしまいますが、戦後のインタビューで彼女は応えます。
「人間として当たり前のことをしただけ」
彼女は2010年に100才で亡くなりますが、その間きれいに整えられた自宅で質素に暮らします。
その凛とした雰囲気を教えてくれているのがこの本です。
以前「博士の愛した数式」っていう日本映画がヒットしたことあるんですけど知ってます?
寺尾聰さんと深津絵里さんが主演したんですけど、静かで心安らぐ映画でとても好きなんです。
この原作の小説を書いているのが小川洋子さんという方なんですが、この人の文体が大好きなんですよね。
「思い出のアンネフランク」の最後に載っていた参考文献のリストを見ていたら
「アンネフランクの記憶:小川洋子」
ってあったんです。
「これは読むしかない!」と思って早速図書館で借りてきたわけです。
ポチャナンダ
アンネの日記は小川さんが文章を書くきっかけになった本なんです。
中学1年だった小川さんはアンネが自分の友達のように思えたとか。
それでアンネの真似をして日記を書き始めたのが始まり。
日記を書くのが楽しくなって、そのまま小説家になってしまったという話が載っています。
そんなアンネフランクファンの小川さんのもとに「アンネフランクの足跡をたどる本を書きませんか?」と出版社から依頼があったと思うんです。
というのもこの本が出されたのは映画「シンドラーのリスト」が公開されたあと。
世界中で「アンネフランク展」が開かれているような時期だからです。
「アンネの日記が注目されている今、誰よりもアンネフランクを敬愛しているであろう小川さんに書いてもらったらいい本になるだろう」
と出版社が考えるのは当たり前のことですよね。
小川さんは出版社の人とオーストリアに住む日本人の方と3人で旅に出ます。
小川さんが旅に出るにあたって見たかったもの、それは、
- アムステルダムの隠れ家
- アンネが日記帳をお父さんと一緒に買った店
- 友達とソフトクリームを買っていた店
といった場所ですが、どうしても会いたいと思っていた人がふたりいるんですね。
それが
- 「思い出のアンネフランク」を書いたミープ・ヒース
- 「アンネとヨーピー」を書いたジャクリーヌ・ファン・マールセン
です。
ポチャナンダ
アンネがユダヤ人中学に行っていたとき誰よりも仲良くしていた親友。
アンネのお父さんが出版した初代アンネの日記ではヨーピーという名前で、完全版アンネの日記ではジャックという名前で出てきます。
ポチャナンダ
この人はこの本を1990年に出版したのですが、戦後自分がヨーピーであることを明かさなかったんですね。
アンネのお父さんや限られた人だけが知っていて、知っている人たちは彼女がヨーピーだと知られずに暮らしたいという気持ちを持っていることを尊重してくれていたんです。
しかし、アンネの日記が公開されて世界的なヒットとなった結果、
- アンネのことを知っている人からインタビューを聞きたいというニーズが出てきた
- 書籍や雑誌・映像関係者がアンネの友人を探した
- アンネの友人を名乗る人たちが大勢出てきて、思い出を語るようになった
という流れになったのです。
しかし、中学時代ほぼ毎日アンネと一緒に過ごしていた自分から見たらどう考えてもウソを並べ立てるようにしか見えない人が次々と出てくるわけです。
ポチャナンダ
最初のうちは「自分は目立ちたくない」「仕方のないことだ」と思っていたジャクリーヌさんですが、あまりにもひどいウソが目立つことに心が揺れ続けます。
そしてその気持ちをアンネをよく知る人たちと話すうちに「アンネだったらあんなウソをつく人たちにひどく憤慨するに違いない」と思うようになって動き始めます。
最初は「アンネフランク財団」、その後は「オランダ国立戦時資料研究所」に相談するんですが、利権や人間関係が絡む問題ゆえにこんがらがっていて話にならないわけです。
お金が絡んでいるゆえにアンネフランク財団なんかは腐敗していたような気もします。
それでジャクリーヌさんは自分の思い出を本にすることを決意するわけです。
ポチャナンダ
アンネの日記に書かれている内容の背景だけでなく、
- アンネがそばに隠れているとは微塵も思わずに暮らしていた戦時中の自分の体験
- 戦後アンネの父・オットーフランクと過ごした時間
- アンネの日記が出版された時の自分の気持ち
- アンネが有名になっていく裏で起こっていたこと
- 本を出版しようと決意するまでの経緯
などが書かれています。
アンネの文章力が途方もないことは周知の事実ですが、ジャクリーヌさんの文章力もすごいものがあります。
冷静に淡々と話している感じなんですが、どんどん引き込まれていく。
アンネは文系の能力に秀でた人でしたが、ジャクリーヌさんは理系の才能にも恵まれていました。
「歴史や語学などは調べれば誰でもできることだから勉強ではない」と思っていたそうで、数学をアンネに教えていたエピソードが印象的です。
そのほかにも性への興味の強かったアンネが話していたことや、学校で人気者だったと日記で書いていることの背景なども書かれていて、これを読むことでアンネがどんな人だったかがものすごくイメージできるようになりました。
ポチャナンダ
イカさん
そんなわけで、
- アンネの日記
- 思い出のアンネフランク
- アンネフランクの記憶
- アンネとヨーピー
という4冊を読んできたわけですが、アンネの日記を読むならこの4冊はセットで読んだほうがいいよなって思います。
ポチャナンダ
- 思い出のアンネフランク(著者:ミープ)
- アンネとヨーピー(著者:ジャクリーヌ) または アンネの日記
- アンネフランクの記憶(著者:小川洋子)
ですね。
この順番をおすすめします。
ポチャナンダ
「思い出のアンネフランク」を読んだら「アンネの日記」を読みたくなると思うんです。
そして十分に楽しめると思います。
でも我慢できるなら「アンネとヨーピー」を先に読んでほしいというのが本音です。
なぜなら「アンネとヨーピー」を読むとアンネの性格がわかるから。
アンネの性格がイメージできているとアンネの未熟さゆえの日記での記述がわかるのでもっと面白いと思います。
そして最後に1読者として小川さんと一緒にアンネの記憶の残る場所を巡る。
そうするとジャクリーヌの話・ミープの話が非常によく理解できる。
この流れを通ったら感動の嵐になると思うんですよね。
ポチャナンダ
そんなわけで感動の嵐が終わって一晩たったわけですけど、僕も小川さん同様アンネ / ジャクリーヌ / ミープの3人が大好きになりました。
イカさん
そしてそんな人たちを育てたオランダという国に今まで以上に興味が湧きました。
「アンネの日記、昔から気になってるけどまだ読んでないんだよな〜」という人はぜひ読んでほしいです。
幸せな気持ちになりますよ。
というわけで今日はここまで。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
イカさん
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